2017-10-31
自然に感謝する空間で、絶妙な距離感を保ったおもてなし。英国人夫妻が築いた理想の“旅館” で、日本人が大切に守ってきた伝統の新しいカタチを発見したい。
空港からクルマで約2時間。原生林の中にコンクリートの建物が溶けこんでいる。「林の中で座して忘れる」。名前にはそんな意味がこめられている。
バーなどの共有スペースの窓からはアンヌプリの山や、湧水が沢となって流れこむ池、落葉樹林が広がる。周囲の自然と調和するように、館内の建材はウッドを中心に石や錆びたままの鉄。館内を彩る花は、庭で摘んだものだ。
雪の結晶から名づけられた客室は15。ホテル棟内の廊下で繫がりながらも、各部屋は“棟間”というスペースが置かれ、ヴィラのようなしつらい。各戸でデザインが異なるが、源泉かけ流しの露天風呂があるのは共通だ。ムイネ山から昇る朝日を受けながら、湯自体からひのきの香りが立ち上る温泉に浸かる。丘側の湯船からは見渡すかぎり、うねる牧草地と山並みが、空気遠近法のように広がる。今は色彩にあふれる秋、ニセコのほかの季節の表情も見てみたい。
オーナーが目指すのは、日本人に認められる宿。それは世界が認めることだから。その言葉が誇らしく思えた。